喫茶店の話

いまどき喫茶店にあこがれている僕もどうかと思う。そこには僕が夢で見るような風景なんてきっとないはずだった。それでも僕は一度だけと決めて喫茶店に入る。そこには僕があこがれたすべてがあった。

片手で数えられる程度に歳の離れた姉が僕にはいた。その日は出かけるときに姉に声をかけらた。どこへ行くのか。喫茶店に行くのだと僕は答えた。

分からない。分からないのはコーヒーの種類だった。だけどコーヒーの種類も知らないでこの店に入ってきたのかなどと店員さんに思われたくはなかった。だから僕は中でも一番に予想できない名前を言った。エスプレッソという。

文庫本を読み始めた。喫茶店クラシック音楽に文庫本だ。完璧だった。完璧すぎた。そして何より完璧なのは店員さんだった。

「お待たせいたしました。エスプレッソです」

思わず目をそらしたくなるような美人だった。ジロジロ見られているのを知られたら僕は軽蔑されると思った。

「ごゆっくり……」

独特のかすれた声と、目を伏せるしぐさをどうにか目に収めてコーヒーカップを持ち上げる。家で使っているものよりカップが小さい。これで500円だった。恐ろしかった。だからこそこの喫茶店は完璧だった。

僕は数ヵ月後この喫茶店のその店員さんに告白することになった。しかし店員さんには好きな人がいて、それがなんと僕の姉だと言うから驚きである。そこから、僕と店員さんと僕の姉という三人が織り成す、夢と憧れの物語が始まるのである。しかしそれを記すにはあまりに余白が少な(ry



……少ないのは僕の頭だよ☆