メイドロボのありがとう

やっと、やっとだよ。メイドロボが普及したんだ。だけどまだまだ高くて買えない。仕方ないのでメイドロボのいるファミレスへ通う日々。

メイドロボの存在そのものもおもしろいんだけど、ファミレスの店員であるメイドロボと客のやり取り、コミュニケーションのさまを見るのもおもしろい。

メイドロボ「いらっしゃいませ。何名さまでしょうか?」

客A「二人」

メイドロボ「こちらのお席へどうぞー」

これは……以前人間がやっていたのと変わらないな。次の客はどうだろう。

メイドロボ「いらっしゃいませ。こちらのお席へどうぞー」

客B「……」

今のやり取りは、普段1人で来る客が、あらかじめメイドロボに人数を尋ねないように言ってあったのだろう。ものぐさなヤツだ。

メイドロボ「……」

客C「……」

……。もはや発言がない。目をあわすなり席に案内するメイドロボ。

こんな風に、個々人が店員に期待する接客だけを受けられるようになった。なんていい時代なんだろう。

このファミレスではネットワーク上のデータベースによって、どの店舗に行っても(メイドロボがいれば)同じサービスをしてくれる。来店時の接客以外にも、たとえばトーストやスクランブルエッグの焼き加減、皿を下げるときのセリフや動作などなど、あらゆることを注文可能だ。

本当にすばらしい。今日も注文したラザニアは僕の猫舌を考慮して少し冷ましてある。完璧だ! これなら明日も来ようと思える。

翌日。僕はまたファミレスにやってきた。もちろんメイドロボのためだ。

メイドロボ「……あ、山本君。また、来てくれたんだ。でも……私のこと、そんなに心配しなくてもいいんだよ? そりゃ、私だって昔は病気がちで、学校へ行っても保健室ばっかりって生活だったけど……でも、もう私だって高校生だもん。保健室だって月に一回くらいしか使わないし、こんな風にアルバイトだってできる。え? どうしてそんなこと言うのかって? ……その、なんていうか、あんまり心配されてると、信用されてないのかなって。私、ずっと考えてた。普通の女の子みたいに、みんなと一緒に授業うけて、帰りは一緒に歩いて帰って、寄り道したりして、アルバイトしたり、……それに、それに、こ、恋だって……したいし…………え? 最後が聞こえなかった? も、もう、バカ。二度も、こんなこと言えないよう……。そ、その、だからね、あんまり心配されると、私って、山本君にとってそれだけの存在なのかなって。普通に友達としてとか、……お、おお、お、オンナノコとしてとか、見てもらえないのかなって。あうう、わ、私なに言ってんだろ! い、今の忘れてっ。お願いっ。……え? 忘れない? 『僕は君に会いに、ここに来てる』? ……そ、そんな、それ、それって、それって……つまり、私のこと……山本君……私のこと……。え? 僕のこと嫌いかって? そんなっ……嫌いなわけ、ないよ。だって、山本君、いつも私のこと見てくれてたし、心配してくれてたし。でも、きっと心配されてるだけなんだろうなって思ってたから。え!? いきなりそんな……好きじゃなかったら心配なんてしない……なんて。……その……いいの? え? なにがって? だから……私のこと……。だ、だから、だから、私……山本君のこと、好きになっても……いい?」

僕「もちろんさ!」

メイドロボ「こちらのお席へどうぞー」



あとがき

はてなブックマーカーさんのコメントを見て思いついた。例の「ありがとう」の話。なんか書こうとは思ってたけど、やっぱ自分で書く評論おもしろくないから、こんなふうにバカなこと書いてたほうが気が楽ね。