ちょう

カーテンを揺らす自然の風。

まだ聞こえてこない、セミの声。

出窓の透明なビンに光が差し込んで、反対側に別の光が現れる。

下半身のだるさ。

そこにきて、私の焦燥はいっそう勢いをつけて、

僕を急き立てる。

電車はすぐに次がやってくるから、急がないでもよい。

空腹でめまいがする。


僕の目に影は濃くならず、

ただ白い部分の色が飛ぶ。

あいまいなものが増えて、

あいまいなままこの季節は

冬になる。

鋭さをもって冬は僕に明確さを教えてくれるけど、

身体は冷えて動かなくなるだろう。


彼女の示した言葉を受け取れば僕は幸せになれたのだろうか。

彼女の言う好きという言葉にもならない言葉を僕は、はぐらかしてしまった。

僕は彼女のことが好きではなかったからだ。

好きだと言われることは好きだったけど。むしろそれしかないのかもしれないけど。

彼女のキスを意識すれば僕は今幸せなのか。

そして僕は甘い夢にいまだ幻想を見るという典型的な社会人を演じる。


詩のつもりで久しぶり文章は書かれる。

書いていることはいつもと変わらず、

それ以上に不明瞭さを増す。

僕はただ言葉をつなげることに作業的楽しさを見出す。

それ以上の楽しさを見つけられない。

積み上げられたものを自身の中に感じられない。

言葉は無造作につなげられ、僕の思う不自然さは極力省かれる。

同じ言葉を避ける。


僕は電車を待つ。たとえ次の電車が一時間後でも。

時間の価値を下げる。

自身で裏切ってきたものに後悔しないように、価値を下げる。

だから僕の中で女性の価値は恐ろしいまでに低く設定される。

だから僕の中で絵の価値は恐ろしいまでに低く設定される。

だから僕の中で言葉の価値は恐ろしいまでに低く設定される。