赤いもの

好きな色を就職活動中の面接で聞かれたことがある。なんて答えたかは忘れた。

そういうことを聞かれたりアンケートとられたりするっていうことは、なんとなく聞いたことがあった。ようは、赤はリーダー気質だとか、そういうあてにならないような心理テストに使うのかもしれないし、あるいはただの話題として使われているのだろう。とはいえ、そんなことを話題にして具体的なことを伝え合えないような企業なんてクソ食らえだなって思う。リラックスさせるならリラックスさせるなりに上手い方法だってある。

そんなこと言いながら僕は好きな色という話題が嫌いではない。僕には好きな色がたくさんある。好きな色がたくさんあると、自身の曖昧さがよく分かっていい。それはいつも僕を悩ませることのひとつなんだけど、色についてはその実害がないから安心だ。いや、ファッションセンスという実害がなくもない。

僕は赤が好きなんだけど、赤い服はほとんど着ない。服についてはあまり気を使わないタイプなので、色は地味な色とか着ておけばいいかって思いながら奇抜な色を着たりする、よく分からない、というかファッションセンスのない僕です。

赤で言うと、むしろ道具が赤いというのが好ましい。携帯とか、携帯プレイヤーとか、ベースとか。赤いものっていうのは積極的に使いたいような色に思える。上でバカにしたくせにまったく短絡的な思考だけど。

青は好きなんだけどあまり持たない気がする。現実に作られた青はあまりきれいでないような気がする。空とか海とか、もっときれいで壮大なものに青は似合っている気がするから、青い塗料が使われた物にはあまり惹かれないのかも。パソコンの画面に映った青なんかは、わりかし好きかもしれない。すっきりしている感じ、シャープな。

黄色も好き。たぶん原色で嫌いな色はないと思う。特別好きな色がないとも言えるかもしれない。特別意識していない色っていうのはあるかもしれないけど。

好きな色はって聞かれてすぐに答えられる人をすごいと思う。色に限らず、種類のあるものに対して何らかの意見を持っている人というのは、しっかり生きているのだなぁと勝手に見る。その逆に、僕はそうやって種類のあるものに対して「これが好き」と言えてしまう人を浅はかでバカな人間だと思う。とくに何も考えておらず、たんにその色が好きということにしているだけに見えるからだ。じゃあ他の色に魅力はないのか。おまえは本当に吟味してその色を選択したのか。

言いながら、やっぱりそれでも、たとえその人が僕の思うような愚かな人間だったとしても、何かを選択できるっていうのはすごいことだと思う。僕は選択することができない。そしていつも僕は、そんな愚かな、ただ流されるまま選ぶなんてことしかできない。