その声を胸の中に焼き付けて、私は生きてきたのだから


僕が泣いたのは、あの日の思いが消えてしまったと感じたから。冷静に考えてみれば、あの日の思いは今に続いているから、消えるなんてことはないのだけど。もっと言えば僕は、たぶんあの日のまま何も変わってはいなくって、ただ懐かしさだけをあの日から見続けている。

僕の始まりはどこにあるのだろうかと、しかたのないことを考えてみる。結局それが他人にあるわけではないということが、少ないながらも経験という形で分かってきた気がする。もちろん他人を拒絶して生きていきたいわけではないし、逆を言えば、もっと他人を拒んでもいいのかもしれない、とも思う。なんにせよ僕自身が、ひとりであることを重要だと信じるならば、僕にはひとりでやらなくてはならないことがあるということだ。

いつか、どうにかなるんじゃないかって考えで、僕の考える「どうにか」は来ないと思う。これもただの、ひとつの信念でしかない。信じるようにしか生きていけないという思い。自分は規定されているという考え方。これは否定されるものではない。他人に否定できることではない。だってこれは信念なのだから。

いつか海を渡って旅をするようなことがあれば、きっと彼女の歌を口ずさむ。だろうと思う。