とりとめのない六人の話04

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事前説明みたいな文章が続くと嫌になるんだけど、それが終わるとお話を書かなくちゃならなくなるから、それもそれで嫌になるという……。

とりとめのない六人の話04

どうしてこういうことになったかという説明は、すれば長くなるので省くことにする。
とにかく、父の会社がこのテストにおける重要な位置にいたということが、私が唯一の人間として駆り出された理由であろう。

ここには多くの企業のロボットが寄せ集められ、30人のクラスを作っている。

なぜそのようなテストが必要なのかという説明も、専門的になりすぎるので省くことにする。そもそも私には理解できない。

今現在、全国の学校のクラスには、平均して三人(三体か)のロボットが出席している。

それでも多すぎると思わないでもないが、一クラス全員がロボットというクラスは世界にここだけだ。もちろん私を除いての、全員だ。

「では黒板に書いてあるとおり、係・委員会決めをしたいと思います」

クラスの面々は静かに私を見ている。

例外的に、私のよく知るロボットであるマツリだけは手を振ったりニコニコ笑ったりにぎやかそうにしている。おめでたいことだ。

ちなみに、先ほど先生が私を名前で呼ぶと言い出したのも、ロボットには苗字がないからだ。

社名をロボットの苗字にするということは原則として禁じられていて、テスト段階では他の生徒にどこのテストロボットなのかということは知られないようにしている。

そしてもちろん、そんなことお構いなしに生徒はそのロボットが「どこ製」かなんて知っている。

知られていなければ宣伝にならないのだからあたりまえだ。

教育現場という性質上、建前だけは宣伝行為を禁じている。ただそれだけのことで、実際には、学校はロボットをテスト入学させればさせるほどお金が入るという仕組みだ。分かりやすい癒着と腐敗である。

「まず、決めるにあたって副委員長と、書記を二人決めたいと思います」

ひととおり見回して、とりあえずというところで私はマツリを指名した。

「マツリは副委員長で決定ね」

「えぇ!? 嫌だよ面倒だ!」

無視して教壇の横に引っ張ってくる。マツリは結局おとなしくなった。

「どうせ副委員長なんてやることないんだから、いいでしょ」

私は小声でマツリにそう告げる。

「そうなの? じゃあべつにいいけど……」

小声でマツリも答える。雑用仕事は全部マツリに押し付けてやると心に誓った。

「じゃあ書記です。立候補はありますか?」

そして驚いたことに、また、面倒なことに、クラスの全員が手を挙げていた。

「あーあ、みんなやる気満々だ」

何がうれしいのかマツリは笑いながらそう言った(この子はいつも楽しそうなのだ)。