小説

日常に積もった奇跡

キッチンタイマーが鳴った。7分という時間は、このパスタを完全に茹できるには2分ほど短い時間である。あとの2分間分を使って、パスタをソースに絡めるのである。私は彩菜の『風の辿り着く場所』を口ずさみながら、トングを使って手早く鍋からパスタを取り出…

忘れたころに、なにごとも

Kanonの舞を題材にしたショートストーリーです。http://homepage1.nifty.com/itachin/compe/sscompe1/ss/00155.htm として応募した黒歴史を友達が発掘したので、せっかくだからとリメイクしました。 『忘れたころに、なにごとも』 ふと突然に、忘れたころに…

無題

私は「中学校」の「卒業式」を思い出していた。たった一年間、それもひとクラスしかない、その特別な学校の卒業式。そこを卒業して私は高校に通うようになったのだから、逆説的にそれは中学校の卒業式だったのだ。九割が、いつもの無表情だった。その形だけ…

Rita

部屋には誰もいない。私だけだった。私は意識を少しでも明瞭にしようと努めると、まず部屋にひとりだってことを考えた。これってたぶん、誰かが居てほしいってことなんだろうなと自己分析する。分解して、ひとつひとつを丁寧に眺めて、またそれをくっ付けて…

手癖短編。桂言葉とロボット転校生のお話。

見つめているとそれに気がついて、私は無意識に、彼女の髪に手を伸ばした。たんぽぽの綿毛が、ひとつくっついていたのだ。あと少しで髪に手が触れるかというところで、私は思い直す。私には彼女の髪に触れるほどの勇気なんてなかったし、なんとなく、その綿…

SRSS

最後の音が響く。人が大勢いるとは思えないほどの沈黙。そして一瞬あとに拍手が起こった。拍手は盛大ではないけれど、それは私たちの演奏の余韻が客席の彼らに残っているからだ。少なからずプロとして活動してきた自分にはそれが分かっていた。横に目を向け…

こんな僕にも大学で彼女ができた話

久しぶりにmixiにログインしたら、最新の日記が「彼女できた自慢」でした。自分で言うのもなんですが、さすが自分で書いただけあって、自分的には嫌いではないです。私小説的なものに憧れてます。せっかくなので引用再掲。 2008年07月20日20:30のmixiの日記…

SRSS

シンフォニック=レインの二次創作小説です。リセルシアとファルシータの百合、っていうかレズっていく感じの話。もう自分でさえ、各話の整合性が取れていない! 妄想小説万歳!簡易目次……「SRSS」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 (ほとんど書かれていな…

ゲームシナリオの原案短編小説

揺れる視界のその端に、兄の姿が見えた、気がした。 私はとっさにその「兄」を庇った。それは幻ではないのだ。しかし見間違いではあった。私は自分の頭のまだ動くわずかな部分で、その兄に見えているものがカナであると認識し、庇ったのだ。 次の攻撃が私の…

光が見えているうちに

もちろん……突然、もちろんから始めたがるのは僕のクセだ。もちろん、その列車は……、そう、これは列車の話だ。列車で旅をする人の話だ。もちろん、その列車は、何らかの喩えとしてレールを辿っている。線路は続くよ、で始まる歌の歌詞は、それは世界をつなぐ…

いつか同人誌に載せたリトルバスターズのSSが見つかったよー

おそらく僕がまとまりのある文章を書いた最後の作品であろう。比較的長いので「続きを読む」にしときました。 本文 ふわりと水の上に浮かぶように私はまぶたをひらきました。 「くーちゃん」 「小鞠さんですか?」 妙にスッキリと目覚めた私の前には、小鞠さ…

15分の物語

部屋の一面がガラスで出来ていて、そこからは海が見える。 私は原稿用紙に最初の一文を書き始めた。詳しい話の流れは、すでに出来上がっていた。あとは書くだけだ。 食器がこすれるかすかな音がした。次いで足音が近づいてくる。キッチンから同居人である彼…

SRSS1-2

シンフォニック=レインの二次創作小説です。リセルシアとファルシータの百合百合しいお話になる予定です。簡易目次……「SRSS」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 あらすじ リセルシアの父であるグラーヴェに、リセルシアの卒業演奏のパートナーになれと、な…

SRSS2

ゲーム、シンフォニック=レインの二次創作小説草稿の続きです。元のゲームのお話の内容が気になる方は、読まないことをおすすめします。 あらすじ 卒業演奏をともにすることになったリセルシアとファルシータ。しかしファルシータは重病を患う。絶望するフ…

SRSS1-1

はじめに シンフォニック=レインの二次創作小説を書こうと思い立ったので、少し練習に書いて見る。とくにたいしたことはないと思うけど、ネタバレとか気にする人は読まないほうがよい。ただ、未プレイでも楽しめるように書こうとがんばろうとは思う。 雨の街…

とりとめのない六人の話2-02

あらすじ シイコとナナミは、クラスの重要人物であるアキ・マツリ・イズミの監視を終えると、昼食をとりにラーメン屋へ。そこでタライに入ったラーメンを注文するシイコ。ラノベっぽさを目指そうと思った。ラノベと言えば超盛りラーメンチャレンジ!何気にこ…

とりとめのない六人の話2-01

あらすじ 今回はイズミと、彼女の開発者である暁さんのお話。イズミは大好きな暁さんと一緒に、帰りの車の中でおしゃべり。話は盛り上がり、ふたりはみずから科した制限をさっさと撤回してしまうのだった。どうしようもねぇな!簡易目次 「とりとめのない六…

とりとめのない六人の話2-00

待望の第二部が開始。アキの友人であるマツリ視点で進行します。アキについての衝撃の真実! 怒涛の展開に君はついていけるか! ぼく自身ついていけません!簡易目次 「とりとめのない六人の話」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 あらすじ シイコとナナミ…

習作(未完)

それであなたは自分が特別なのだとでも思っているのかと問われ、私は頭に血が上ってしまった。そしてそれを言った彼女を殴りつけ、何度も踏みつけた。重い感触とは裏腹に、彼女は仲間たちに引っ張られながらも、平気そうな顔でトイレをあとにした。自分のや…

とりとめのない六人の話10

第一部完!山本先生の次回作にご期待ください。 簡易目次 「とりとめのない六人の話」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 とりとめのない六人の話10 廊下の隅。人通りは少ない。イズミは唐突に切り出した。「単刀直入に言って、じゃんけんのとき、勝った二人…

とりとめのない六人の話09

簡易目次 「とりとめのない六人の話」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 とりとめのない六人の話09 「ちょっと、あなた達ね!」雑談していると、教壇の前にツインテールの女の子が来て叫んだ。名前は……何だったろうか。ビジュアルは覚えやすいが、さすがに…

とりとめのない六人の話08

簡易目次 「とりとめのない六人の話」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 とりとめのない六人の話08 他の役職については、話し合いによって順調に決まりつつあった。書記として、教壇の隣に立つことになったシイコが、最初から『話し合い』でも同じ結果だっ…

とりとめのない六人の話07

あらすじ ロボットだらけのクラスで委員長に選ばれたアキ。書記二人を選考することになるのだが…… 簡易目次 「とりとめのない六人の話」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 とりとめのない六人の話07 私は教壇の上で手を上げた。目の前の彼女達は基本的にス…

とりとめのない六人の話06

このあいだ暇つぶしに06を書きました。久しぶりに書いたわりにキャラクターが僕の中でしっくりくるので、これは期待できます(なにを?)。細切れなのを続けて読むのも面倒という人にあらすじを紹介!林森秋(ハヤシモリ・アキ)という女の子は、父親の仕事…

とりとめのない六人の話05

山本先生の次回作にご期待ください。簡易目次 「とりとめのない六人の話」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 とりとめのない六人の話05 さてどうするか。いっせいに挙がった手を見て私は思考が止まっていた。そんな中、ひとりだけ手を挙げていないヤツがい…

とりとめのない六人の話04

簡易目次 「とりとめのない六人の話」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記事前説明みたいな文章が続くと嫌になるんだけど、それが終わるとお話を書かなくちゃならなくなるから、それもそれで嫌になるという……。 とりとめのない六人の話04 どうしてこういうこ…

とりとめのない六人の話03

簡易目次 「とりとめのない六人の話」の検索結果一覧 - 黄昏時の街の日記 とりとめのない六人の話03 教壇に立った先生は唐突に、私を指名して言った。「じゃあ、林森秋(ハヤシモリ アキ)がこのクラスの委員長ということで」「ちょっと待ってください」私は…

とりとめのない六人の話01

ワシの未完小説ファイルは108まで……は、さすがにナイ。ちなみにこの「とりとめのない」は、この程度の長さで六話まである。当然のごとく未完。 あらすじ メイドロボが世間に溢れてます。それぞれのロボットのメーカーさんは、運用テストのためにこぞって学校…

とりとめのない六人の話02

ちょっと01が短すぎて、まったく話に入っていけてないので02もあわせておきます。前の話 とりとめのない六人の話01 - 黄昏時の街の日記 とりとめのない六人の話02 なぜ私を転校させることが父の利益になるのかと言うと、それは私が行くことになるクラスに理…

「ルーム」草稿小説

少し前にルームって名前のゲームを作ろうと思って書いたイメージ小説です。せっかく書いたので投稿しておきます。 メロディー 僕の告白に彼女は「ごめんなさい」とだけ言うと、目をつむり黙り込んだ。彼女のことを普段から目で追うことの多い僕には、彼女の…