とりとめのない六人の話08
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とりとめのない六人の話08
他の役職については、話し合いによって順調に決まりつつあった。書記として、教壇の隣に立つことになったシイコが、最初から『話し合い』でも同じ結果だったと言った。じゃんけんは無駄だった、ということだろうか。
「どういう意味?」
「いや、べつに」
べつに……。
今のシイコの態度や、マツリにしてもそうだが、私に言いかけたことをごまかして、何になるというのだろうか。最初から言いたくないことなら言わなくてもいいだろうに。言いたいことだけを言えば……。
それとも、そうやって言いよどんだ方が印象を強くさせることができるという計算なのだろうか。まさに今、私が思い悩んでいるように。
「……ところで、あなた議事録付けてないみたいだけど」
横に突っ立っているだけのシイコを私はとがめた。
「頭に書き込んでる」
「書かないとダメに決まってるでしょ」
「あとで紙にすればいいだろ。というか、アキ以外に誰が議事録なんて必要とするんだ。みんな詳細に記憶できるのに」
それもそうだ。しかし、では一体、ここにあなた達が集っている意味はなんなのか。
「あんまり深く考えても仕方ないさ。どうでもいいけど、『あなた』とか呼ぶのやめてくれないか」
「そう……、ごめん」
妙に迫力のある声でシイコにそう言われて、私は素直に謝ってしまっていた。
「人間に『おまえ』とか言われるの、本当にイライラするよ」
低い声でシイコは言う。
「そこまで言わなくてもいいでしょ……。別に私は!」
いいかげん嫌な態度ばかりとるシイコに、私は声を上げる。
しかし、ナナミさんにそれを遮られた。
「シイコ、ちょっとアキさんに酷いんじゃない?」
そう言いながら、ナナミさんはシイコの頭を軽く叩いた。
「痛いなぁ、おい」
シイコが頭を抑えながら言った。そして私を見る。
「べつに、おまえに……アキに言ったわけじゃない。人間全般にって話だよ」
「人間嫌いなの?」
「まぁ、そうだね。どちらかと言えば大嫌いな方だ」
「……」
こんな危険なロボットがいていいものだろうか。人間が嫌いな人型ロボットなんて。
「大丈夫だよ。人間を滅ぼそうと思っているわけじゃないし」
冗談のように笑いながらシイコは言った。
「シイコも、別に心の底から人間を憎んでいるわけではないんですよ。こういう性格なんです。人間に限らず、他人が受け入れがたいんでしょうね」
ナナミさんが困ったような顔でそう言った。言いながらシイコの頭を撫でる。
「大丈夫だよ。私だって別に、好きじゃないしね、人とか」
マツリが割り込んできて言う。
「そうなの?」
「うん。やっぱ猫でしょ、猫。猫は超可愛いよね!」
「そうですね、猫は可愛いです。シイコも、猫なら好きでしょう?」
ナナミさんが静かに笑いながらシイコに尋ねる。
「まぁ、犬よりかは好きだね。人間に尻尾をふらないぶん」
シイコはそう言って鼻で笑った。